第九話 旅の後に考えたこと

姫の新たな挑戦もこうして幕を閉じ、気が付けば季節は夏になっていた。その日から、特に決まったスケジュールもなく、今後のことを現実として考える日々が始まった。まずはこれからどうしていくか、しいなえいひとして、もう一度活動を再開するべきか、それはどういった形でがベストなのか、日々考えながら、けれどすぐにその方法も見つからないまま、季節は秋へと変化する。

「働いていた日々があって、それが終わって。そのことだけ考えれば、ひとつ物事としてやり遂げた感覚はあるけれど、今度は別の現実がそこにあったよね。しいなえいひとしての活動は、ストップしたままの状況に違いはなかったし、このままフリーでやっていくにしても、その方法も分からないというのが現実だった。けれど、ずっと心の真ん中には、ビジュアルバムや、しいなえいひとして残された仕事に対する想いはあったから、とにかく少しずつでも前に進まなくては、という思いではいた。石井さんや西村さんは、大里さんのことも以前からよく知ってて、私の状況や経緯も知った上で何かと気にかけてくれたしね。」

石井さんや西村さんは、そんな姫を変わらずに見守り続けてくれた。

「石井さんや西村さんには、本当に感謝している。わたしが普通に働いていることも、二人には報告してたから、そういった意味でも、すごく心配もかけていたし。働き始めた後も、わたしがその後しいなえいひとしてもう一度活動することについて、いつも応援してくれていたというか、絶対に辞めちゃダメだって、ふたりはずっと言い続けてくれていたから。

石井さんなんかは、自分の事務所にとりあえず籍を置いて、活動を始たらどうかって、そんな風にまで言ってくれていて。けれど、そういうわけにもいかないし、どうするべきかなって考えあぐねていて、でも、気持ちの半分では、このまま終わっていくのかなって、時にはそんな風に思うこともあった。今後しいなえいひが、この日本で活動していく方法論として、ベストな形で今後新たな環境に出会うことが、現実として、リアルに思い浮かばなかったというのもある。

それは、やる気がなくなったとか、そういうことではなくて、それまでの活動をしていた中で感じていた難しさとか、結果を残しても変わらなかったこの日本での現実とか、そういったことに対する感情や状況もあったし。ビジュアルバムに関しては、いつか何らかの形で、創り続けたいって気持ちに変わりはなかったけど、これからどうするべきなんだろうって、悩んでいるばかりだった。そんな時かな、西村さんから連絡が来て。」

「電話口で、西村さんから、私に会いたいって言ってる人がいるってことを聞いて。一度会って話がしたいと言ってるから、姫の連絡先を教えていいかと西村さんに言われたの。その時は、正直、様々なことに対する気持ちや状況も整理がついてない状態だったし、ありがたいお話だなとは思ったけれど、こんな状態だし、どうするべきかなと思ってうまく答えられなかった。だけど、西村さんに、ぜひ一度話を聞いてみて欲しい、自分も知っている信頼できる人だからって言われて、西村さんがそう言うならと思って、迷いつつも、わかりましたとそう答えたんだ」

そして次の日、早速姫のもとに一本の電話が鳴った。この出会いが、その後の姫にとっての大きな意味を持つ出来事となる。