第四話 しいなえいひ補完計画とその歩み ベイビーズについて思うこと

そんな女優活動の傍らで、2010年2月3日しいなえいひ補完計画〜タブリスへ愛を込めて〜」を設立。

しいなえいひ自身が記す、しいなえいひの「光と影」自らの立ち位置を鋭く分析し、その鋭い感性と独特の日本語感覚で紡ぎだされる世界観は、椎名英姫的言ノ葉活動を象徴するサイトとして浸透してゆく。

クールでミステリアスな女優としての立ち姿の一方で、自らパンダの着ぐるみに身を包み、しいなえいひのドッペルゲンガー、パンダーマンとしても活躍。そのコミカルでシュールな風貌は、まるで別人のような風情であるとの噂だが、すべてそれも計算済み、しいなえいひの真の姿であることに変わりはないらしいとの噂。

そしてそんな姫の姿を共に楽しみ、受け入れ、その真意を誰よりも分かってくれているのがファンであるベイビーズだと姫は語る。

「よくあるスターの常套句的な意味で言ってるんじゃなくてね、そういうのは苦手だし嘘くさいし、言いたくはないから、本当の意味で思うことだよ。

わたしのような挫折だらけの不良を、応援してくれるベイビーズがこの世界のどこかにいるということが私にとっての何よりも支えだから。海外での認知度はある意味、オーディションや残酷警察の流れもあって、媒体として日本よりも受け入れられているという受け皿があるのも知っているから、もちろんそれも光栄なことだし、心からありがたいと思っているけれど、日本に住むファンは、それとは違ってある意味特別ではある。」

「単純に思うわけよ、この日本でね、しいなえいひじゃなくても、もっといっぱいテレビや映画に出てわかりやすく活躍してる女優さんは居るじゃない?でもしいなえいひっていう存在は、神出鬼没的な、良く言えばミステリアスでこだわりがあるなんても言われるけど、逆を言えばマニアックというか、マスメディア的にわかりやすく大衆受けする存在じゃないじゃん?

だからたとえば、周りの人との話で、好きなアーティストは誰?ってなった時に、「しいなえいひです」って答えたとしても、「ああ、昔モデルやってた人ね」くらいの反応はあっても、日本では大概は、「誰それ?知らない?売れてないよね?」とか、知らない人はそう簡単に言えちゃうくらいの感じだと思うわけ。

けど、ベイビーズがすごいのは、それを認めないところ。「しいなえいひはもっと評価されるべき存在だ、今に見てろよ!そのうち時代がついてくるぜ!」って、本人のあたし以上にしいなえいひに誇りを持ってくれてるところがね、もうとにかくすごい(笑)

だからそんな現在の日本での認知度や活動形態の中で、しいなえいひを好きだと思って応援してくれてる人は、ある意味すごいロックっていうか、ほんと、イカしたベイビーズだと思うよ。」

そんなベイビーズを愛する姫にとって、自分にとっての一番の自慢は、自らの活動の履歴やステイタスではなく、自分を応援してくれる人々の存在だという。

「若い頃はね、どこか自分と、その自分自身から生まれた目標とか、願望とか、どちらかというと内的なエネルギーのほうに目が行きがちじゃない?もちろんその内的なパワーで走り抜ける時期も、アーティストとしてあっていいとは思うんだけどね。けど今は、やっぱりそれだけじゃないよね。

自分自身と、そこから見える景色には、ひとりじゃなくて、家族やスタッフや、西村さんたちやベイビーズや、たくさんの大切だと思える人々がいて、それごと自分自身になってるっていうか、今はそういう感覚があるよね。

だからその大切な景色ごと、一緒に上がっていきたいというか、やっぱり、笑ってて欲しいもんね。「しいなえいひって誰?知らない」って言われて「今に見てろよ!」って思ってくれてる人たちに、いつかは「ほらね、言ってたでしょ?時代がついてきただけだよ」って、大きな顔してもらえるようにやっぱり、なっていかなきゃいけないし、これからはそれがテーマだなって、そう思ってるから」

姫が補完計画を立ち上げたのは2010年2月の姫の誕生日のこと。それまでの数年間、様々な状況から、自らの言葉で話すことを封印していた姫。補完計画を立ち上げるに至った経緯は、開設当時からページに掲載している「ハローベイビーズ」の中ですべて語られている。

それからの数年、補完計画を訪れるベイビーズとの報告やあたたかいやりとりは続いた。補完計画が立ち上がって一年目となる2月3日には、一年間歩んでこれた記念と感謝の気持ちを込め、一周年の記念特別ページを立ち上げ、姫とベイビーズ、西村監督や石井監督、姫の友人や弟なども参加し、それまで姫に関わってきた大切な人々と一緒に、補完計画一周年の誕生日を祝った。

ベイビーズからは、公認ファンサイトの創設者であるKapaさんを筆頭とし、一周年の誕生日を記念した姫へのサプライズプレゼントとして、パンダーマンをモチーフにした愛にあふれる皆からの作品を掲載し、あたたかいおめでとうのメッセージと共にお祝いしてくれたことが姫にとって今でも忘れられない思い出だと言う。

そんな補完計画の歩みの中で、特筆すべきはやはりパンダーマンに集約されるのではないだろうか。

今やお馴染みとなった姫のもう一つのキャラ「パンダーマン」が産まれたきっかけは、何を隠そう、この補完計画が始まりであった。補完計画の人気コンテンツ、「うたたね日記」の中で、姫がある日悪ふざけで披露したシュールなパンダの着ぐるみ姿にベイビーズは大うけ、その盛り上がりをそのままに「女優のイメージがなんぼのもんじゃい!」と、姫もノリノリで応えた結果、時を同じくして「白黒の向こう側〜灰色だっていいじゃない」というパンダーマンが主体となった企画を立ち上げるに至る。

三池崇史監督の映画「ゼブラーマン」の名ゼリフと同じく、パンダだけに「白黒つけるぜ!」を密かな合言葉に、ミステリアスな女優とは思えないウィットにとんだ鋭い発言と、笑いに命を懸けた振り切れたはっちゃけっぷりを解禁、そのイメージのギャップとアバンギャルドな活動っぷりは、ベイビーズはもちろんのこと、業界内でも大きな衝撃と密かな玄人人気を沸き起こした。

その後すっかりイケイケな存在となった「パンダーマン」は、ついには映画「はらぺこヤマガミくん」に出演を遂げ、しいなえいひのもう一人のキャラ「パンダーマン」として、しいなえいひが出演した映画の舞台挨拶やイベントへのゲリラ出演、「客寄せパンダ上等!」などというふざけたタイトルで雑誌の連載をノリノリで務めるなど、その活動は補完計画のみに留まらず、多くの人々の愛されるキャラとして羽ばたいていった。

また、Kapaさんのサイトでは世界中から訪れるファンとのやりとりや、「パンダーマン」をコラボした作品なども掲載され、まさに国境を越え、ファンの人々が集うきっかけとなっていった。

そして姫自身も、日々の創作に対する想い、作品について、舞台挨拶や映画公開について、活動の報告の他にも、日々の様々な思いを正直に、姫が自らの言葉で綴る唯一の場所として、補完計画という場所は続いてきた。元気な時も、そうでない時も、ありのままに、真実の姿を描き続けてきた姫の飾らない姿は、ここを訪れる人々の心を繋ぐ糸のように、まっすぐに続いていった。